変身
正解と不正解しかない世界。
しかも「正しい」答えはたった1つしかない。
それ以外は全部間違い、誤り、失敗。それは犯してはいけない罪。
だからいつも「正しい」答えを探さなきゃいけない。答えは1つしかないから、間違ってはいけない。
笑顔でいるのは良いことで、不機嫌でいるのは悪いこと。
褒められるのは良いことで、怒られるのは悪いこと。
テストの点数が高いことは良いことで、平均点より低いのは悪いこと。
喜んでもらうのは良いことで、怒らせるのは悪いこと。
良い子でいるのが良いことで、悪い子でいるのは悪いこと。
これがわたしの頭の中。
25年間、親や先生、親戚、先輩上司…
みんなにとっての良い子でいることで、自分の存在を肯定して生きてきた。
褒められて、褒められて、認められて、それが自分の至上命題だった。
そうしてわたしが失くした主観。
自分の好きなことや自分の感情には目もくれずに生きてきて、いつのまにか自分を失くしていった。
正解じゃない答えがあるなんて、知らなかった。自分の中にしかない、自分だけの答え。
世間一般で良しとされる答えじゃなくて、自分が良いと思う答え。
衝撃だった。そんなものどうやって見つけるんだよって。
わたしは今でも「正解」を求めてしまう。自分との向き合い方がわからないから。
今まであまりにも寄り道せず、失敗せず、王道の優等生ルートを歩いてきてしまったから。
自分と向き合うのは辛い。
暗くてドロドロしてるから。何にもできない自分が悲しくて腹立たしいから。
自分が自分でしかないことを受け入れるのは、ある種の絶望だと思う。
わたしはこの絶望を乗り越えて、人間になれるだろうか。